2016_09
12
(Mon)00:58

Be yourself ~プロローグ~

「こちらが鍵です、合鍵も含め2本お渡ししておきます」
「それでは重要事項説明をさせていただきます・・・」
「えくさん?起きてます???」

「起きてます、その説明とやら終わったら起こしてくれます?」

10分後、あたしはこの町でおそらく唯一であろう不動産屋を出る。
そう、今日は新しく住む家の契約と鍵を受け取る日だ。

あたしの名前は江久ペリ子。
今日から、この町で生きていく。
仕事はまだ決まってない、知り合いもいない。
日本海沿いのさびれた町で今日から生きていく。

1度下見に来て、持ち主のいなくなった古びたこの家が気に入った。
即入居を決めた。
何より海の香りがするこの町を直感で気に入った。
あたしは、持ってきたスーツケースとミカン箱ほどの段ボール1個だけを家に放り投げてすぐ海に向かう。

ここに来る前に色んなものを処分してきた。
持ってきたのは、スーツケースと段ボール1個、ポンコツになったTOYOTA。
最低限の家財道具だけは後から送られてくることになってる。

FMをON、セブンスターに火をつけて海辺に車を停めた。
父が死んでからあたしはタバコを始めた。

やっと来たんだ・・・
ここまでの自分をふと振り返った。
FMからCCRの『雨を見たかい』が流れてる。

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あたしは東北のある都市で産まれた。
記憶の中に母はいない。
父はお堅い銀行員。
いつも帰りが遅い気難しい父が大嫌いだったあたしは、近くの叔父の家で過ごすことが多かった。
父は、あたしにいつも普通であることを強いた。
自由とか個性とか一切認めないお堅いつまらない男だった。
毎日決まった時間に起き、不器用な手つきで卵を焼き、不細工なおにぎりを作って決まった時間に勤めに出て行った。
あたしはいつも一人、中身の入っていないおにぎりを食べて学校に行く。

子どもの頃、将来の夢はファッションデザイナーって言ったら悲しそうな顔で言った。
「女は黙って短大にでも行って会社勤めして嫁に行くもんだ」と。

結局あたしは、個性とか自由とかそんなものを否定されて大人になった。
いつも父の顔色を伺い、父に否定されない生き方だけを選んだ。
そして父の言う通りに短大を卒業し、地元信金に就職した。

就職後、父の口から母の話を一度だけ聞いたことがある。
珍しく酔っぱらって帰宅した父が、ふと口にした母の名前は「ばるこ」。
「本当はばるこの奔放なところが好きだったんだ」
「あいつは今でもあの町にいるんだな」

1か月後、父はあっけなく死んだ。
酔っぱらって千鳥足で国道を横断し、帰らぬ人となった。
リストラにあったんだと知ったのは、葬儀も済ませた後だった。

そんなある日、話があると叔父宅に呼ばれたあたしに夫婦は優しく言った。
「お母さん、和芋場っていう町にいるらしいよ」
「探してみたら?」
「ぺり子はぺり子の生きたいように生きていけばいいんだから」

ずっと自由に生きたかった。
父が買い与えてくれたのは、いつも普通の服、普通のスニーカー、AUの国内メーカースマホ、普通のカバン。
社会人になってからも、黒や紺やグレー以外のスーツを着ると露骨に嫌な顔をした。
外食は決まってそば屋で定食。
家電はソニーか松下(panasonic)
そうじゃなくて、好きなものを選び、好きな色を着て、興味のある勉強をして、自分で選んだ人生を歩きたかった。

「お母さんは奔放な人だったんだ、会いたい」
その思いを打ち消すことができず、あたしは信金に休暇願を出した。

母のいる街へ行こう
自由に生きて行こう
今までできなかった生き方をしよう


地元から遠く離れた和芋場町に、飛行機、電車、バスを乗り継いで初めて訪れたのは先月のこと。
この町にいるはずの母を探すにあたり、しばらくホテルに泊まらないといけない。
けど来てみたら、この町に宿泊施設なんてなかった。
途方にくれていたあたしの目に映る町の風景は、それでも何故か何もかもが心地よかった。

とりあえず駅のある町に戻ろう。
降りたバス停で1時間バスを待った。

「さっきの方?」
途中どこのバス停に待つ客もなく、乗り合わせた客もないバス。
乗ってきたバスが折り返しでまた私を乗せたらしい。
運転手はあたしを覚えていた。

「見かけない顔だけど、もう用事はすんだのかい?」
ネームプレートには味噌って名前が刻まれている。
人が好さそうなおっさんだ。
何となくあたしは、この町に住んでいるかもしれない人を探しに来たことを告げた。

「住んだ方が安上がりよ?」
「こんな町にホテルやら旅館があるわけないしょw」
「ホテル代、交通費なんか考えたら喰われちゃうよ?」
「ほら、ここ田舎だけどPHSの電波も入るから俺もずっとPHSユーザーよ?」
誇らしげにを胸ポケットから取り出したのはストレートのガラケーみたいな端末だ。
おもちゃのようなしかも水色とピンクのツートンカラー。
あたしはスマホしか触ったことがない、しかも色は決まって白か黒。
おっさんがポップなカラーのPHSを自慢することに驚いた。

これがこの町で初めて出会った人だった。
そしてこの初めて出会った人のかるーい一言で、あたしは移住を決めた。
とりあえず住む家だけ決めて、引っ越しの準備のためにそのまま帰路についた。

休暇だったはずが辞表を持ってきた私を上司は引き止めることはしなかった。
都会にいたら、あたしの代わりなんてどこにでもいる。
あたしにはわかってた。
取り替えのきく普通の存在ってこういうことなんだと。

父が大事にしていたBOOWY、氷室京介、浜田省吾のCDと、母の若い頃と思われるモノクロの写真、身の回りのものだけを段ボールに詰めた。
普通であることだけを極めてきた私に、思い入れのあるものなんて何一つなかった。
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CDをデッキに滑り込ませる。
浜田省吾の『いつわりの日々』をチョイス。
初日は少し思い出に浸ってセンチメンタルになり過ぎた。

沈む夕日が水面に一筋の光の道を照らしだしている。
もう涙を拭こう!

明日からこの和芋場町でどんな生活が待っているんだろう。
母は見つかるんだろうか・・・

(続く)


★今日の曲たち
CCR 『雨を見たかい』
浜田省吾 『いつわりの日々』

★今日のゲストさん
味噌カステラさん:私がブログを書き始めた当初、最初にコメントをくれた記念すべき第1号さん。
こんなまだ自分のことグダグダ書いてるだけなのに、コメントくれる人がいたー!ってうれしかったです。
ありがとうございました♪
DDIポケットからのユーザーさんってことだったので、親近感がひとしおでした。




 
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2016_09
11
(Sun)17:52

新企画にあたり

期限なし、エンドレスかもしれないしすぐエンドかもしれないけど始めてみることにしました。

まず私がこのブログを始めた主旨ですが、MVNO業界の端くれにおりますと、日々感じることがあります。
各社その良さだけアピールして利用者を増やしている一方で、デメリットやそれに伴う諸々がほとんどウヤムヤになっている現状。
ある程度理解できればキャリア、MVNOと選択肢は広がり、ニーズに合わせてお得に使いこなすことができるようになってきた今だからこそ、初心者にもその諸々を伝えたい。
という思いが日々強くなりました。
まあ、本当に何もわからない方だとPCで検索することもあまりない可能性もあり、どこまで人の目に触れるのかはわかりません。
が、個人としてできることはしてみようと思い立ちました。

それとは別に、DDIポケット時代からのユーザーであり、現在はワイモバブランドとしてSBの一部とはなってしまいましたが、ワイモバ愛で良さを伝えたいという思いがずっとありました。

機械や端末の詳しい部分とは別に、ライトユーザーおばちゃん目線で、おばちゃんおじちゃん層の乗り換えのきっかけになったり、端末を選ぶ楽しみを知るきっかけになったり、むしろ詳しい方から情報をもらったり、人に聞けない疑問の答えが書いてあったりするそんなブログにしたいなと思っていました。

個人レベルなので、自分の周りのことしか書けません。
検証も会社でやっている内容などは業務上書けません。
なので、普通の人なら知ってるだろーレベルのことしか書いてありません。
たまに誰得?と思うような日記を書いてたりするので上記の主旨と全く関係ないこともあります。

ですが、そんな中でもコメントを頂いたり、メール送信欄を設置してからメールで質問や感想をくれる方が増えました。
とてもとても感謝しています。

ネット上の出会いってリアルとはまた違うものですが、その感謝の気持ちと一期一会の精神で何かできないかなーと思っていました。
実際何もできないのですが、感謝の気持ちを込めて妄想小説企画を始めてみようとある日出勤途中の満員電車の中で思い立ったおばちゃんです。

え?暇なの?
はい、暇です。

いやいや結構お仕事は忙しいんですが、そんな中ちょっとその箸休め的な小説風(その手の勉強したことないので・・・)なものを書いていこうかと思います。
その日その日で主人公以外の登場人物が変わります。
かなり妄想入っていますので、完全にフィクションです。
何も携帯の情報はありませんので、興味ない方はすっ飛ばしてくださいw
いつまで続くかわかりません、着地点も決めてません、メールやコメントがない時は続編もお休みとなります。
また、中の人の妄想が捗らないと書けないため進捗もその日次第という行き当たりばったり状態です。
そんな無計画企画ですがよろしくお願いします

今日は自分の地区の秋祭りが18時から始まるため、夜中に酔っ払いながら第一回目を投稿してみる予定です。



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